食糧不足対策計画と経済モニターの紹介

2016/12/1

日本マラウイ協会201611月定例会資料1124日(木))

 

2016/17年食糧不足対策計画(20166月 マラウイ共和国)の抜粋の仮訳

http://reliefweb.int/report/malawi/republic-malawi-20162017-food-insecurity-response-plan

計画対象期間

20167月~20173

人道支援を必要とする人口

650万人

この計画の人道支援の対象者

650万人

生産が全くできなくなった農民

240万人

栄養の支援を必要とする子供と女性

975,000

被災し支援を必要とする地域

24県(全国の28県中ChitipaKarongaNkhata BayLikoma4県が含まれていない。また食糧対策の対象にはMzuzu市、Lilongwe市、Zomba市、Blantyre市は含まれていない。ただし市外の同名の県は含まれている。)

この計画に必要な予算

39,513万米ドル

確保された予算

9,132万米ドル

差額

3381万米ドル

 

マラウイ 2016/17年期食糧不足と対策計画の規模

単位:人

単位:米ドル

単位:米ドル

人口(2016年)

国内総生産(2015年)

国内総生産/人口

16,800,000

6,565,382,259

391

 政府予算概数(2015/16年度)

政府予算/人口

 1,500,000,000

89

被災者数

対策費

対策費/被災者数

6,500,000

395,130,000

61

被災者数/人口

政府予算/国内総生産

 

0.39

0.23

 

 

対策費/国内総生産

 

 

0.06

 

 

対策費/政府予算

 

 

0.26

 

出典:World Development Indicators

Ministry of Finance, Economic Planning and Development, Malawi                    

ただし人口はマラウイ脆弱性評価委員会(MVAC)による。

 

201611月での為替:1米ドル=約720クワチャ

 

 

 

栄養不良と死亡率の増加が懸念される県

 

 

洪水
被災地

かんばつ
被災地

北部地域

1

Chitipa

 

 

2

Karonga

 

 

3

Rumphi

F

D

4

Nkhata Bay

 

 

5

Likoma

 

 

6

Mzimba

 

D

中部地域

7

Nkhotakota

 

D

8

Kasungu

 

D

9

Ntchisi

 

D

10

Dowa

 

D

11

Salima

F

D

12

Mchinji

 

D

13

Lilongwe

 

D

14

Dedza

 

D

15

Ntcheu

F

D

南部地域

16

Mangochi

F

D

17

Machinga

F

D

18

Balaka

F

D

19

Zomba

F

D

20

Neno

 

D

21

Mwanza

 

D

22

Chiradzulu

F

D

23

Blantyre

F

D

24

Phalombe

F

D

25

Mulanje

F

D

26

Thyolo

F

D

27

Chikwawa

F

D

28

Nsanje

F

D

 

 

被災県数

14

24

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

マラウイは20167月から20173月までの期間に、災害にともなう食糧と栄養の危機に直面している。これは2015年の破壊的な洪水に追い打ちをかけるものである。この状況にたいしマラウイ大統領は2016412日には国家災害事態を宣言し国際社会や民間部門からの人道支援を呼びかけた。

  この食糧不足対策計画はマラウイ政府、国連機関、非政府機関からなる人道支援クラスター(グループ)が協力して立案したもので、緊急支援の最優先分野を、(1)食糧確保、(2)栄養、(3)農業、(4)保健、(5)教育、(6)水と衛生としている。20166月時点でエルニーニョにともなうかんばつは180万人に影響を与えており彼らは生計を取りもどすための農業投入物を必要としている。推計50万人は安全な水を得ることができていない。耕作された農地の約31%はかんばつの被害を受けておりそのうち13%は深刻な被害である。全国28県のうちの24県で栄養不良と死亡率増加が特に懸念される。約975,000人の623か月の子供、さらに妊婦や授乳期の女性は食糧と栄養の不足の重大な危険にさらされている。次の収穫期である2017年の3月まで全体で650万人が食糧の緊急人道支援を必要としている。このなかにはHIV保持者などの弱者が含まれている。

  この対策は食糧不足に対応するものであるが、強靭性を確立する活動とも連携し長期的に食糧と栄養の不足の悪循環を断つことを目指している。

 

戦略的目標

・かんばつの被災者にたいして緊急に命を救い持続する支援を行う。具体的には基礎的な食糧と物資の提供と健康のための活動を行う。

・支援クラスター(グループ)間の連携と全体的なモニタリングによって分野横断的な課題に優先的に取り組む。具体的には弱者保護、ジェンダー、HIV/AIDSである。

・すでに行われている強靭性強化活動と連携してかんばつの被災者の生計を取りもどす支援を行う。

 

優先的な活動

・十分な食糧をとれない人数を減らす。(食糧)

・深刻な栄養不良を減らす。(栄養)

5歳未満の子供の栄養不良やまずしい食生活にともなう死亡率と罹患率の増加を防ぐ。(子供)

・被災農民が農業投入物を得やすくする。(農業)

・被災者のうちで安全な水、衛生設備、衛生サービスを利用できる割合をあげる。(水と衛生)

・病気の発生を監視し予防する。(保健)

・調整、モニタリング、評価の機能を高める。

 

現状

マラウイでは天候不順にともなう災害が数年にわたって続いており深刻な被害をもたらしている。さらに、気候変動によってこうした災害はより頻繁により強くより予測困難になっている。こうした天候不順による危機は、弱い経済、弱い土地管理ともあいまって食糧不足と栄養不良の悪循環をひきおこし基本的な社会サービスを破壊し、結果として長期的な発展を妨げている。

  その結果、国全体では食糧余剰か不足かによらず年をおって多数の国民が人道支援を必要とするようになっている。

食糧不足人口

  食糧不足の拡大傾向が現れてきている。長引く乾期、突然の洪水、降雨パターンの変化により多くの地域で農業生産がしだいに低下している。こうした状況において慢性的に食糧不足と栄養不良に苦しんでいる人々を特定することが不可欠である。

  気候変動気象サービス局(DCCMS)によると、現在のエルニーニョ現象により、201510月から20163月までの累積雨量は南部と中部の大部分の地域で平年以下であった。平年並みか平年以上の雨量があったのは北部だけであった。マラウイ脆弱性評価委員会(MVAC)の予備的評価によると、雨量不足と平年以上の気温にともない次期にむけて低収穫、牧草の成長不良と再生不良、水不足が生じている。

  エルニーニョにより201510月から20161月にかけて中部と南部の雨量が減少しかんばつが発生した。飢餓早期警戒システムネットワーク(FEWSNET)の20164月の報告は、2015/16年期の雨量が必要量の30%から40%であったと示唆している。一方で北部では大量の降雨が洪水をもたらした。

  農業かんがい水開発省(MoAIWD)は国連FAOその他の関係者とともに現状の確認と対策の検討のために全国のすべての県農業官と協議した。その結果、以下が判明した。地域別では南部が深刻で少なくとも51%の農地(主にとうもろこし)が甚大な被害を受けた。

 

長引いた乾期の農業生産への影響

 

耕作された穀物農地

左記の農業世帯

備考

全国

2,100,000ha

4,200,000世帯

0.5ha/世帯

かんばつの被災

654,344ha31%

1,845,833世帯(44%

0.35ha/世帯

上記のうち

収穫ゼロかほとんどゼロ

270,108ha13%

523,384世帯(12%

0.52ha/世帯

 

20164月のMoAIWDの第2回農業生産推計調査(APES)によると2015/16年期のとうもろこしの生産量は2014/15年期の12.4%減と見込まれている。それは2013/14年期の42%減に相当する。統計によると2015/16年期のとうもろこしの生産量はこの8年間で最低になる。また2年連続で全国の必要量を下まわる生産となる。しかも不作はとうもろこしにかぎらず米、豆類(豆、ささげ、きまめ)、ソルガム、きび/あわ、ピーナツなどにもおよんでいる。このことは、零細農家とくに中部と南部の零細農家にとって食糧の不足と収入機会の不足を意味している。

  降雨不足による2014/15年期の不作の結果、とうもろこしの価格は直近の品薄時期(201512月~20163月)に急騰し、20151月水準の2.4倍近くになった。また20162月には家畜の病気が発生した。

  こうしたすべての要因と多様な収入機会がないことがあいまって、村落部の零細で脆弱な農民は問題を克服する手段を失っていき、一家の乏しい資産をいっそう乏しくしている。その結果、生きることが精いっぱいの零細農家は経済面や気候面でのショックに非常に脆弱になり後ろ向きの対応が多くなっている。とくに所有する家畜や器具の売り急ぎや備蓄種子の誤用は次期の食糧生産の再開をむずかしくしている。とくにへんぴな地区ではこの問題が深刻である。

  20173月以前には収穫が見込まれないことにより、現場調査の結論は、農民は食糧を得るための収入にありつくために、例年より早く資産の売却を始め、農業以外の活動にかかわり、嫌がらせや虐待(とくに女性や子供)の危険にさらされているというものである。

  マラウイのとうもろこし生産は2007/08年期以降では2014/15年期にはじめて必要量を下まわり2015/16年期にも続けて下まわった。それにともない2015/16年期には食糧不足人口は大幅に増加した。

  マラウイ脆弱性評価委員会(MVAC)の20166月の報告によると、24県で6,491,848人が食糧不足に陥る見込みであり食糧支援を緊急に必要としている。これは全人口の39%にあたる。20167月から20173月までの食糧供給が細る全期間にわたる食糧不足の程度は県によってことなる。県によっては食糧支援が必要な期間は3か月であるが、Nsanje県をはじめとする他の県では9か月にわたる食糧支援が必要な県もある。南部はエルニーニョの影響が強く多くの県で5か月から9か月の食糧支援を必要としている。さらに南部の過半の県では村落部の60%をこえる人口が食糧不足の危険にさらされている。Nsanje県とChikwawa県は村落人口の90%が食糧不足の危険にさらされている。食糧不足と栄養不良では975,000人の6から23か月の子供と妊婦や授乳期の女性の危険がとくに高い。状況の悪化によってマラウイ政府は災害事態を宣言した。これは、対策の拡充、緊急事態のための追加歳出、支援機関を通じた資金の追加支出を目指すものである。

全国の支援対象人口

各県の支援対象人口

感想

この仮訳では詳述していませんが、マラウイの食糧不足への対策が立案され実施されています。その意味では悲観する必要はないかもしれません。一方、食糧不足と外国の支援が恒久化されてしまうのではないかという心配が生じます。日本マラウイ協会の活動は微々たるものですが、マラウイウォームハートプロジェクトや他の団体の広報の支援などを進めています。

 

マラウイエコノミックモニター「より強く浮上する」(201610月 世界銀行)抜粋の仮訳

https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/25339

I 経済発展

2016年にマラウイはかんばつとそれに続く2年つづきの不作に直面した。国内総生産(GDP)の成長率は2.5%と見込まれている。

・マラウイはとくに気象の変動にたいして脆弱である。かんばつが与える人道的な影響は深刻であり、全人口の約40%が食糧不安を経験するとみられる。

2年つづけてGDP成長率が人口増加率を下回っており2016年にも生活水準は低下する。

・危機に対応するためのマラウイ政府の財政余力は限られている。

・政府は財政赤字を穴埋めするために国内資金から多額の借り入れをしている。

・公共支出を集約する最近の政府の努力は一定の成果をあげた。しかし現在の人道的な危機の中にあってこうした努力を持続することはむずかしい。

2016/17予算年度の予算は食糧調達と農業の強靭性強化のための投資への配分を重視している。

2016/17予算年度の赤字はGDP4.1%に達すると見込まれている。これは2015/16予算年度の実績である4.3%よりは縮小している。

・インフレ率は4月までは低下したが、おもに食糧価格の高騰により6月と7月には上昇した。2017年初期の収穫期までは価格上昇圧力があるとみられる。

・かんばつと弱い経済成長が2年続いたことは産業界の信頼に影を落としている。

2017年には経済の立ち直りは可能であるが、そのためには多くの政治的にむずかしい改革を実施しなければならない。

・南部アフリカにおける強力なエルニーニョの影響には往々にして同じように強力なラニーニャの影響がつづいて起きる。マラウイでは例年を上回る降雨量となる可能性もある。

・中期的に経済が良好であるためには、マラウイは強靭性を高め、内部からと外部からの両方の変動に対処しないといけない。

(1) ひずみを減らし農業市場をより効率的に機能させる政治改革

(2) 経済の安定性を維持し財政の規律を改善する施策

(財政赤字、過剰借り入れ、民間部門の押し出し効果の縮小)

(3) 気象変動への強靭性を高め経済を多様化するための投資

 

II 貧困と脆弱性

・現在、マラウイはその歴史の中で最も深刻な人道的危機のひとつに直面している。

・現在の食糧危機は疑いもなく気象変動の結果であるが、かんばつの影響を増大したのはマラウイをショックにたいして特に弱いものにした政策である。

・収入関連でない指標を見ると、近年における人間開発分野では元気づけられる進歩がなされた。

・しかしながら、この進歩は引き続く問題に妨げられてきた。そのうちでは村落部における金銭的な貧困がもっとも蔓延し解消していないものである。

・食糧不足と慢性的な貧困も広範に存在し続けている。

・慢性的に貧しい人口の大部分は村落部に住んでいる。

・今日までのところ村落部における持続的貧困解消の成果は十分あがっているとは言えない。

・村落世帯の生活水準の向上のためには農業生産性の向上が不可欠である。

・実証的な推計によると、2010年から2013年の期間で農業生産性の10%の上昇は農業世帯のひとりあたりの平均消費水準を1.3%高めるものであった。

・残念ながらこの期間の平均的な生産性の上昇は8%に過ぎなかった。

・マラウイの農業生産性は停滞している。その理由は相乗効果のある農業投資の不足と情報不足である。

・マラウイのような農業経済が中心の世帯では、概して天水農業による穀物生産といったひとつの収入源だけに依存して生活の需要を満たすことはできない。

・マラウイでは農業以外の部門とくに自営部門に参入することは、その世帯の社会経済状況を改善することにつながる。

・村落部の収入は比較的低いだけではなく、つねに天候や健康の変動の危険があり不安定である。

・政府の主な社会安全網プログラムの対象範囲は最近拡大されたもののまだ狭い。

・マラウイの現在の危機は、マラウイをより強くより強靭なものとして浮上させるための徹底的な改革の機会を提供している。

(1) 将来の成長の基礎をつくるためにはマクロ経済の安定性を確立することが不可欠である。

(2) 農業生産性の上昇なくしては、置き去りのない成長は見込めない。

a. 農業部門へのよりバランスのとれた歳出

b. 農場投入補助プログラム(FISP)の目標の明確化

c. 柔軟な短期支援の実施

d. 肥料による補助から現金による補助と補完的なサービスの提供への変更

(3) 農業生産性を高め村落の貧困を削減するには、大胆な構造改革を加速しなければならない。

(3.1) 世界の経験によると、よく管理された都市化の過程は、しばしば置き去りのない構造転換の促進役になる。

(3.2) 都市化とそれにともなう経済の構造改革は複雑な力と過程を含み注意深い管理が必要である。

a. 都市化を抑制する政策の偏りを取り除く。

b. スマートな都市化を促進する。

c. 都市の雇用創出を促進する。

(4) 政府は安全網プログラムの効率と効果を高める施策を実施すべきである。

a. より多くの受益者に相応する大きな価値を配分する。

b. 影響を大きくするように対象を決める。

c. マラウイ社会行動基金-公共事業プログラム(MASAF-PWP)が作り出す資産価値を評価する。

d. 社会的現金移転プログラム(SCTP)の対象を再定義する。

(5) 政府は貧困削減を推進するために人口構造の転換を加速する施策を実施すべきである。

(5.1) マラウイが貧困率をさげ人間開発の水準をあげるためには出生率の低下を促進する施策を実施する必要がある。

 

感想

食糧不足は自然現象であるだけではなく社会経済現象であり貧困問題の表れのひとつであるとされているようです。貧困削減の方策としては農業の生産性向上にくわえて健全な都市化、農業以外の産業の振興、出生率の低下もあげられています。これらは言うはやすくではありますが重要であると思います。

マラウイの地図